ナゴヤサクソフォンコンクールについて〜運営委員長より


NEW 第7回ナゴヤサクソフォンコンクールに寄せて(ご挨拶に代えて)

 

昨年2月、第6回コンクール本選を迎えた時、この世の中へ染み入っていく予兆は既にありました。会場になった名古屋芸術大学の玄関にはこれから致命的に品薄となるマスクが置かれていて、審査員は全員がマスク着用で審査に臨んで下さいましたが、でもまだここまでの事態になるとはほとんどの人が想像していなかったというのが正直な所感でした。そして本選ではそのような予兆を忘れさせてくれる熱演が繰り広げられ、各部門において素晴らしい入賞者の方々が誕生し、同時に袴田美帆さん(第1回一般アマチュア部門優勝)との、2019年アドルフ・サックス国際コンクール第6位入賞を記念するコンサートイベントの企画が進行し始めていました。それはこの2021年2月を予定していたものです。

本選から2週間後、全国の学校は突如休校となり、劇場やホール、ライブハウスは営業自粛、音楽はあっという間に世界から消え去りました。その後音楽はインターネットに場を移し、多くの音楽家がその場から必死で音楽を発信し続けました。しかしこのメディアを通した音楽が、世界中の音楽の不在を覆い隠していくような、奇妙な危機感を募らせてきた音楽家は多いのではないかと思います。

 私自身、4月からは学校でのレッスンやクラス授業は叶わないため、オンラインの場に移行せざるを得ませんでした。その時に感じたのは、レッスンや授業は、その空気と時間を共有していたことが最も大きいことだったということです。生徒の目を見て、自分もここぞという時に音を出す。また担当する音楽史のクラス授業でも、授業の空気により話す時間を増やしたり減らしたり、鑑賞の時間を作ったり、声を小さくしたり大きくしたり。画面越しに見る生徒たちの顔は一人一人よく見えますが、全員に別々の時間が流れていることはすぐに感じられたことでした。これは本当に未来へと進化した形なのだろうか、常に重くのしかかり続けたことでした。

 開き直った私見になりますが、音楽というのはその空気と時間の共有を求むる際たるものであると確信しています。肩を寄せ合い、奏者から発せられる空気の振動に心を震わせ合い、同じ時間を共有し、感動を分かち合う。ここに奏者も聴衆も途方もなく魅せられているのです。「平常時に戻る」という言い方をよく耳にしますが、今我々に求められているのはそのような受動的な姿勢よりも、「切羽詰まった前進」を開拓する能動的な知恵の結集ではないかと感じています。

 第7回になるナゴヤサクソフォンコンクールには、過去最多の参加申し込みがありました。この事実に運営委員一同今までに感じたことのない、筆舌に尽くし難い頼もしさを感じました。新時代を新たな知恵と感性を持って背負っていくリーダーが、今年も「ナゴヤからセカイへ」生まれ、羽ばたく日がやってくることを心から祈っています。

 

2021年1月

ナゴヤサクソフォンコンクール運営委員長

堀江裕介

 


ご挨拶

 

 このナゴヤサクソフォンコンクールも第6回を迎えることになりました。第1回の参加者が各方面で活躍しているのをコンサートのチラシなどで見かけると、誇らしく感じる自分がいます。中学生だった参加者は音大生となっており、高校生だった参加者は国際コンクールなどの舞台に立ち、若手演奏家部門に参加した奏者はプロのオーケストラの舞台や華々しいソロリサイタルで喝采を浴びています。また、近年は一般アマチュア部門の参加者も多く、日々の忙しい仕事をこなしながら、サクソフォンを通して自己研鑽に努める、なんとも頭の下がるハイレベルなディレッタント(愛好家)の方々も多く見られるようになりました。

 3人の日本人入賞を果たした「第7回アドルフ・サックス国際コンクール」の「事件」は、まだまだ皆様の記憶に新しいと思います。第6位に入賞された袴田美帆さんは、この第1回ナゴヤサクソフォンコンクールの「一般アマチュア部門」の優勝者でした。彼女は当時まだ神戸大学の学生で、プロの演奏家になるのは諦め、「ディレッタント」を自認していたのです。しかし愛好家として過ごす中、パリの一般大学との交換留学をきっかけに本格的に音楽院で勉強し始め、パリ音楽院生活3年目で世界のトップソリストの仲間入りをしたわけです。なんという夢のある話でしょう。インターネットを通して聴いた彼女のファイナリストとしてのパフォーマンスは、あの時の、プロもアマチュアも関係なくただサクソフォンを愛してやまない彼女のキラキラとした演奏をはっきりと思い出し、大きく胸を打たれました。

 コンクールの発祥と言われるパリ音楽院では、コンクール発足の18世紀末当時は、なんと信じられないことに、専門の楽器の審査はしないという掟があったそうです。それは技術的なことよりも「音楽」として音楽院の学生を評価したいという強い信念が感じられます。(しかし19世紀にはご存知の通り音楽は技術の世界へと突入するわけですが…。)図らずも近い信念を掲げるナゴヤサクソフォンコンクール、今回も素敵な特別審査員をお招きできました。「ナゴヤからセカイへ」、どうかサクソフォンを愛する音楽家たちを、これからも応援していただけたらと切に願い、ご挨拶に変えさせて頂きます。

                       

2020年1月

ナゴヤサクソフォンコンクール運営委員長

堀江裕介

 


ナゴヤサクソフォンコンクールについて

 

 ナゴヤサックスフェスタが、前身のサクソフォーンフェスティバルinナゴヤから始まり、16年の年月を重ねて参りました。名古屋はいつの間にか全国でも有数の、サックス都市として盛り上がりを見せています。このムーブメントが、今度は輩出という形で世界に広がったらという思いでスタートしたのが、ナゴヤサクソフォンコンクールでした。

 私自身第1回からすべて審査をさせていただいてきましたが、回を重ねるたびにどんどん素晴らしい演奏が生まれているのを感じています。中高生の驚くべきレベル、一般アマチュア部門の計り知れないサクソフォン愛、そしてU25部門の限界を感じさせない熱い演奏は、コンクールという枠組みを超え始めました。

 第4回からはアンサンブル部門も新設され、初々しくも非常に美しいアンサンブルから超本格のアンサンブルまで、早速登場しています。

 また、このコンクールの特徴として、サクソフォンという目線だけではなく音楽というスタンダードな目線から外れぬよう、プロのオーケストラ奏者や音大の教員を務められている、サクソフォン奏者以外の特別審査員を招いていることがあげられます。

 これは我々の勉強でもあるのです。サクソフォンはやはり歴史的に新しい楽器であり、我々奏者は常に歴史を背負う音楽家に真摯に向き合う必要があります。サックス村の英雄ではなく、世界に通用する音楽家が、このナゴヤから生まれてくれることを願っています。

 

2019年1月

ナゴヤサクソフォンコンクール運営委員長

堀江裕介